ECLIPSE   
 
In a crispy moment on ECLIPSE : 渡辺篤史/熱帯JAZZ楽団 ECLIPSE Talking Room”Sound Good!”
 
渡辺篤史


5.建築の中のオーディオ


── ところで、ロケの時にやっぱりオーディオに目が行ってしまいませんか?

渡辺 もちろんです。お宅にお邪魔して、オーディオを発見すると嬉しくなりますね(笑)。でも、きちんとシステムが入っているのは10分の1位かな...。シアターという意味で言いますと、液晶やプラズマ、プロジェクター等の大画面を設置されているお宅は増えましたが。

── 案外と少ないものなんですね。

渡辺 そう。社会問題のひとつかもしれませんが、やはり皆が忙し過ぎるのでしょう。ゆっくり落ち着いて、一日の終わりに音楽に聴き入る時間も取れなかった。でも、最近はその反動なのか「自然回帰」や「癒し」「ゆとり」に皆が気付き始めました。そのひとつとして、オーディオで音楽を聴いてリフレッシュするとか、シアターで映画を見て感動するとか、もっと楽しんでもらいたいですね。

── 家族というか人間的つながりの、希薄な部分を埋める事も出来ます。

渡辺 オーディオはね、本来とても個人的な趣味だった。ご主人がオーディオマニアだったりとかね。でも、僕はそれを家族でオープンに分け合うというか、奥さんや子供だって聴く、という様な図式が理想だと思います。親父のジャズCDを子供が聴くという様な事で、親父の見えない背中を子供が見られる訳ですよ。僕にはそれが友人の父親やレコード屋の主人でしたが、これからはそういう部分こそ大切なんだと申し上げたい。そして、その場こそが『住宅』なのですから。そこに新しい自分や家族とのいちページが開くはずでしょ。

── 例えば、これからオーディオを導入しようと言う方々に、何かアドバイスは有りますか?

渡辺篤史
渡辺 そうね、これまで多いのはデザイン重視のメーカー製品が置いてあるパターンです。まあ、絵になるから気持ちは解りますが、デザインとは意味が有って生まれたものに僕は惹かれる。建築も同じで突飛な意匠はそれ自体は面白いのかもしれませんが、その根拠は?というところが無いと悲しくなってしまう。もちろん、人間を引きつける魅力を形で表しているのかもしれませんが、それだけではいけないんですよ、特にオーディオはね。

── 例えばどういった装置が理想ですか?

渡辺 もちろん、聴きやすく求めやすいセットから入っても良いのでしょう。でも、プライスコンシャスと言いますか、生産性や経済優先で作られた、それこそ10円や1円を削る努力をした製品よりも、出来る限り良い音作りの努力をした製品をお薦めしたい。ハイエンドだけがオーディオではないけれど、既成概念を取り払った「聴く事自体に文化的な価値や創造を与えてくれる機械」をね。『建もの探訪』に出てくれる方々は、いい意味で「こだわり」を持っておられる訳です。建て売りでなくて、色んな想いをもって住宅を作ったのですから。ですので、せっかくいい入れ物を作った訳ですから、心や時間、もちろん経済的にも余裕が出来た時は、少しでも「志の高い装置」で良い音楽に浸ってほしいですね。

── 解りますね、渡辺さんの想いが伝わってきます。

渡辺 これは余談ですけどね、海外の映画を観ていて、主人公の部屋のオーディオが映ったりすると、ついついそれに目が行ったりしてしまいます。それで、稀に「えーっ!」て思うほどいいシステムが入っていたりする。つまり、オーディオセットが映るだけで、言わずもがな主人公の教養と言うか趣味性と言うか、キャラクターを表現するアイテムになっていたりしますね。それが、良いか悪いかは解りませんけど(笑)。
渡辺篤史
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