イクリプスTDユーザーリスト
昨今シアターという視点において、ビジュアル面では液晶にしろプラズマにしろ、安価なモデルでも画面は大型化し、クオリティとしてもフルハイビジョン対応のディスプレイが当たり前になってきました。しかし、それに反比例する様にオーディオ面においては、画面の大型化によって搭載されるスピーカーの口径は小さくなる一方ですし、何よりバーチャルサラウンド的な、リアどころかフロント左右のスピーカー迄をも疑似化する様なワンボックススピーカーが市場を賑わしています。そんな中で、廣部さんが何故今回ECLIPSE TDシリーズスピーカーを5.1chマルチできちんと用意されたのか?そのあたりの真意をお聞かせ下さい。
実はECLIPSE TDシリーズスピーカーを導入する以前には、いわゆるバーチャルサラウンド的な効果を持つスピーカーも試してみました。しかし、様々な所で「無理」や「不満」を感じることがあったのです。それは、実際に何本かのスピーカーを立てる「代わり」と言う物理的な利便性以上に、音を何らかの形で加工したり、或は位相や定位を触っている感じがとても「つくられている」ように思えて..やはりECLIPSE TDシリーズスピーカーできちっと5.1chを立てて聴き直すと「あー、これこれ、スッキリ〜」と思わず口に出ました(笑)。
それは、どのようなソフトでチェックされたのですか?
例えばオペラやクラッシックのDVDです。歌劇場のダイナミクスはもちろんですが、やはり一本ずつスピーカーを立てて、サブ ウーファーもちゃんと用意すると包まれ感が全く違って聴こえました。さらに、ECLIPSE TDシリーズスピーカーは音の分離が良いからかもしれませんが、スピーカーが増えたと言うより、明らかにオケの音数が明瞭になった。醸し出すリアルなサラウンド感は、もう決定的に違いました。
少し意味合いも違うかもしれませんが、バーチャルと言いますか疑似という意味では、廣部さんの建築では間違っても壁紙を貼ってしまう様な事はやられないですよね。
木目かと思ったら化粧プリントだったとかですか..(苦笑)。
それはもう、バーチャルというかフェイクですね(笑)。
まあ、こと建築に関して僕は心に決めている事があって、とにかくフェイクな素材やダミーな表現は一切使わないという事にしているんです。それは何故かと言うと「フェイクは時の流れに耐えられない」からです。もうね、いつか必ず馬脚を現すんですよ。ある瞬間に木だと思った物がパリッと剥がれてみたり、石だと思っていたらグニャと曲がってみたりするんです。皮だと思っていたら溶けちゃったとかね、あり得ない事が何かのきっかけで、いつか起こりえる訳ですよ。
時の流れと言う事で言えば、「建築は出来た瞬間が一番良い..って言うのでは基本的に駄目だと思うんです」。やはり「使い込んでいく事でだんだん味が出てきて、さらに良くなっていく事が大切」、だからオーディオも「時間に絶えられないというのでは駄目なんです」。そういう観点で見ていきますとね、別にフェイクやバーチャルだからといって高いものばかりにこだわる必要もないし、逆に素材の特性に素直であれば言い訳ですから。石風に見えるタイルを使うのと、安くても石そのものを使うのでは、住んでいる人に訴えかけてくる部分が全然違う訳でしょ。
深いですね。
ですから、もちろん細心の注意を持って鉄なら鉄らしく使ったり、塗り壁なら塗り壁の良さを引き出すとかね。様々な『素材』が集合して建築と言うのは生まれる訳ですが、その中にフェイクがひとつもない実直さと言うか素直さと言うかな。そういった『本質』こそが人間に『落ち着き』をもたらすと思うんですよ。
いわゆる「本物」だけが持つ「本質」みたいな事ですね。
クラシックの弦楽奏者が古い楽器にこだわられたりしますよね。あれは、その時を経ないと生まれなかった音が必ずあるんでしょう。そういう、時間との関わり方こそが大切なんだろうと。ですから、家を作って引き渡す時に喜んでいただいて、もちろん嬉しいのですが、実はその家族がその家で、時間と共に成長して行く事こそが何より嬉しい訳です。ですから、僕はその年月に絶えうる建物を作りたいと思いますし、その空間を織り成す素材はスピーカーであれ、オーディオであれ『本物』であってほしいのです。
そういえば、今回導入に合わせて用意されたアンプも「ドルビーTrueHD」や「DTS-HD」に対応したものですね。
ええ、いつかは音もそのままデコード出来る形で楽しめるように考えています。長く使えるために...ですね。
これまでの大量消費の世界観から言いますと、電気製品や電子機器に限らず、それこそ新製品はどんどん投入され、なるべく経済効率を優先した物作りや市場があった訳です。そこで使われる部品の素材なども、安く早く沢山みたいな所で、耐久性は二の次みたいな風潮とかね。残念ながら経年劣化ではなく、規格や技術そのものが変わっていかないと市場が成り立たないみたいな部分もありました。そういうのを見直す時期なんでしょうね、今は..。
スピーカーってある種とてもプリミティブで音楽の原点みたいな所があるでしょ。そんな意味からしても、僕にとってスピーカーはひとつの『素材』である気がするんです。ECLIPSE TDシリーズスピーカーは下手に時代に流されるコンセプトでもないでしょ。それこそ、スピーカーとしてのあるべき『本質』が見えますし、そう聴こえるのです。
