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ステレオファイル(Stereophile)誌 2007年1月号掲載
TD712zスピーカー試聴レポート <2/5> |
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Robert Deutsch著 |
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解説と設計
このレビューにある写真を一目見れば、〜私が何千もの言葉を書く手間を省いてくれます〜 TD712zはあなたの持っている典型的なボックススピーカーとは全く似ていません。グラスファイバーコーンの4.7インチドライバーが、人工大理石の卵型エンクロージャーに取り付けられています。後部に面しているポートは直径1.5インチです。スピーカーには、専用の砂が充填された支柱がついており、スピーカーと支柱の接合部分には、その前部に仰角の調整が出来るボルトがついています。支柱には4つの調整可能な脚部があります。しかし、通常のハイファイ愛好家向けとは違い、脚部は平底で、先の鋭くとがったスイク状ではありません。スピーカーと支柱には、あなたがベンツまたはレクサスに期待するような一種の高級車仕上げが施され、外観は光沢のある流線形をしています。TD712zは、将来いつか映画でセット装飾の一部として使われるかも知れません。現実に日本ではグッド・デザイン賞を2005年に獲得しています。
卵殻構造は機械的圧力を分散させるように設計されており、そして平行する壁が無い事で、あらゆる特徴的な「エンクロージャーの音」を最小化しています。しかしこれは、TD712zの機構設計における注目すべき特徴の1つに過ぎません。現実にドライバーはバッフルに取り付けられているのではなく、先端まで外側に広がった5つ支柱に付いた台座に直接取り付けられ、それによって、ドライバーとエンクロージャーが機械的に切り離された浮体構造になっています。
もちろん、コーンが音を発生させるために前後に振れるときは、ドライバーがバタつくのを止める何かが必要です。TD712zでは、それはグランドアンカーと呼ばれる7.3ポンドの鉄の錘です。富士通テンによると、これはドライバーの振動板が理想的なピストン運動を見せることを可能にします。そのディフュージョン・ステーが亜鉛で出来ているという点で、TD712zはより安価な512型と違い、実際に512型に使われているアルミニウムの比重よりも3倍大きい事で、より高い制動効果を発揮します。TD712zのドライバー振動系質量は、512のものより10%軽くなっており、そして磁束密度は20%高くなっています。これらの違いはスペックに反映されており、512では周波数特性が40Hz〜17kHzで感度が81.5dBであるのに対し、TD712zではそれぞれ40Hz〜20kHz、83.5dBとなっています。感度83.5dBというのはハイファイ愛好家のスピーカーとしてはまだ平均以下ではあるが、かの有名なBBC社のスピーカー LS3/5aモデルの82.5dBに優に匹敵するものです。
TD712zは、タイムドメイン社の由井啓之のスピーカー設計理論を引継いだ、富士通テンのエンジニアである小脇宏が開発しました。電話での会話で、小脇は私にTD712zと他のECLIPSEタイムドメインスピーカーの設計をどのように行ったかという経緯を語りました。小脇は電気系エンジニアとして訓練を受け、デジタル信号処理(DSP)に強い経歴を持っています。彼は当初、スピーカーのインパルス応答を測定し、その不規則性を相殺する有限インパルス応答(FIR)の逆フィルターを設計することによって、完全なスピーカーを開発しようとしました。彼はしばらくこのアプローチを続けましたが、結局は諦めざるを得ないという結論に達しました。「補正された」スピーカーの測定値は非常に良かったのですが、音は良くなかったのです。
小脇はDSPによるアプローチを断念し、ドライバーとエンクロージャーの機械共振を減少させることで、優れたインパルス応答を作り出すスピーカーを開発することに注目しました。富士通テンの言うECLIPSETDシリーズの狙いは、波形の異なる構成要素のタイミングに強く依存した「本物の波形再現」を実現することです。小脇によると、この機能ともっとも直接に関連する手段はインパルス応答であり、そして彼は周波数応答をより線形にすることに焦点を当てると、現実にインパルス応答が悪化することになるかも知れないと感じました。彼は、複数のドライバーシステムは周波数応答の線形性を達成するのに若干の利点があるのに対し、文字通りクロスオーバーの潜在的な波形歪み効果を除去できるシングルドライバーシステムは、正確な波形を再生する最大の潜在力を持つと示唆しました。TD712zは、このアプローチを具体化した富士通テンのトップモデルです。
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