倉持:さて、その最新のピアノアルバムのレコーディングについてお聞かせください。
和泉:今回は自分のプライベートスタジオだけで録音しました。新しく入れたピアノとその隣にコンピュータでレコーディングソフトを走らせながら、すべて一人で制作しています。ですので、本当のソロアルバムです(笑)。
ECLIPSE TDスピーカーはどのように活躍したのですか?
そこでは508PAを使い、自分の今録音したテイクをプレイバックしたり、またそれを聴きながらさらにピアノを弾きながら曲調を膨らませていくような事もありました。とにかく、この508を導入前はピアノを録音しては、わざわざスピーカーのある場所に移動して聴くという事を繰り返していました。すべて自分だけですから、録音、操作、再生において毎度移動があったのです。
なるほど。
実際にはシビアな意味ではヘッドフォンでもいいのでしょうが、今弾いて録音したものがどうだったかという事をピアノに座りながら聴いてチェックできるシステムを作りたかった。実際にはピアノの両脇にスタンドを置きスピーカーをセット、アンプも手の届きやすい位置に置いています。
ピアノに座っていると少し左右が離れすぎている感もありますが、少し内側に向けてセットしてきちんと座って聴くと、まさにピアノを弾いている感じとほとんど変わらないで、今弾いたものが聴ける。確かにマイクのセッティングにもよるものもありますが、すごく自然にプレイバック出来るので驚きました。
そういう使われ方は過去になかったと記憶していますね、和泉さんがはじめてだと思います。
それは嬉しいですね(笑)。
ピアノに座りながら一人でレコーディング出来る環境が欲しかったのです。もちろん部屋の広さもあり、ピアノの横に置いても邪魔にならないサイズやデザインというのも重要なポイントでしたね。ピアノは特に強弱やタッチには繊細な表現力があり、突き詰め始めるとなかなか深いものがあるのです。でも、定位感の表現力もそうさせているのでしょうが、かなりのレベルでそのあたりもモニタとして再現され、それがその場でチェック出来うるスピーカーであると思います。
確かに、純粋にモニタリングという事ではもう少し音圧が欲しいなというのはあって、サブウーファも接続しピアノの下に置いています。512という選択もあるでしょうが、これでも充分かと思います。
そのあたり、和泉さんのお気に入りのアーティストの影響などもありますか?
そうですね、スウェーデンのジャズピアニストでラーシュヤンソンという人かな。なんでこんなに美しく奇麗な曲が書けるのかな?と思ってしまうほどです。前の四部作でもそうですが、どうしてもカバーしたくて今回のアルバムでも取り上げています。僕の中ではメロディーももちろんですが、一番大切にしているのはハーモニーなのです。メロディーもハーモニー次第で美しくなると思っています。個人的にはチェロという楽器に魅力を感じていますが、ピアノはハーモニーを操れるというのが最大の魅力なのです。例えば単音のラインを歌う楽器という意味では、ディケイとサスティーンの間に音の表情をコントロール出来る楽器はいいなと思う時もあります。メロディーやハーモニーなどに真摯に向かい合いながら録音がしたかったというのもありますが、ピアノは鍵盤を押して音が出てしまえばそれまでよ、というところもあります。
だからこそ、それこそが一音一音を最初に出すその瞬間の思い入れと集中力は大事だと思っています。 |