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佐藤竹善さん  
■変わりゆく環境、変わらない音楽

── 話題を変えますが、iPodはお使いですか?iTMSなどの楽曲配信はミュージシャンとしてはいかがですか?──

もちろん愛用しています。とても便利で良いと思いますね。きちんとした装置で著作権の管理も出来ているならば、素晴らしい事だと思います。「音楽を聴く環境というのが、その時代時代で変わっていくのは、当たり前だと思います。」今決して音楽にとって良くない環境になっていっている訳ではありません。蓄音機が出てきた頃から、今のiPodまでも根底にある「音楽を聴く楽しみは何も変わらない」と思います。
新しい技術や装置が出てくると、世の流れに追いつく為に、完成されないまま、模索したまま出てくるのというのはもう時代の常なので、当然それに対してそれより前の成熟したものがいいという人が沢山居るのは当たり前です。でも、新しいものも自然と良いものになっていくのです。「それを理解して受け入れらるかどうかが鍵」なのです。
iTMSも聴く人にとっては、楽曲単位で手に入るので音楽に対して非常にハードルが低くなった。その分ミュージシャン側は淘汰されやすくなりますが、その分僕ら自身は良いものを常に作っていけば良い訳ですし。

── もうひとつ、iPodなどを使う際の圧縮の問題はどうですか?せっかくいい録音をしたのにlowレートだとモコモコだったりしますよね ──

それは、目線の違いです。耳が肥えた目線で聴くとそういう風に思っても当然かなと、一瞬思うのですが、それは自分の、いえ皆さんの音楽を聴いてきた歴史さえも否定する事になるのですよ。僕は中学校の時にシングルレコードを初めて自分で買いましたが、当然良い音で聴くという様な発想は当時無い訳です。それこそ、てんとう虫の電蓄プレイヤーにサファイヤ針で喜んで聴いていた。それは、当然そのミュージシャンがスタジオでトラックダウンした時の音になんか成るはずも無い、でも世界中の人々はそんなところから音楽に入っていくんでしょ。
そして、だんだんと自分の経験の中で良い音を知っていって、ラジカセやテープレコーダーを買う様になったりとか、オーディオが欲しくなる訳です。それと一緒だと思いますね。僕はビートルズを中学校で初めて聴きましたが、いまだに聴く度に新しい発見がありまくります。もし僕らが音楽を作る時になるべくちゃんとしたものを作れていて、聴いてくれる人がもっと良い音で聴きたいと促せられるパワーがそこにあれば、それだけで聴いてくれる人も環境も自然に育っていくのです。

── 昔は電蓄、テレコ、コンポとグレードアップした様に、今は収録レートが自然と上がっていくのだということですね ──

そのとおりです。その為にもミックスもそうですが、マスタリングのエンジニアも重要です。日本では認知もまだまだですけど。これだけ再生する装置が良くなっていくと、最終的な出音の要素を決めるマスタリングエンジニアはますます重要になってくると認識しています。

── それは、レコーディング全般にそうかもしれませんね ──

確かにそうですね。今回のアルバムのレコーディングはProToolsでしたが、コンピュータ臭さというのも全くといって無くなりましたし、最初の録りでしっかり取れていれば、とてもいいんじゃないかなと。昔以上にマイクの種類やマイクの立て方や、ケーブルなどをふくめて、最初の素材の録音が重要になってきたとおもいますね。良い音で録れてさえいれば、色んな作業が短時間ですぐに出来るわけです。
ある意味、「レコーディングの機材がここまで良くなったからこそ、一番最初のレコーディングというものが始まった時代に戻っているんじゃないか」と思いますね。昔は後で加工が出来ないので最初に録ったものが全てだった。だからこそ、ある意味良い音で録音するという最初が非常に肝心だった、あの時代とまた同じだと。今は録音したものを後で何でも加工できる様になった。なったからこそ、これはこれで最初の録音がしっかりしていなければいけないんだと思います。 <次へ>
 
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